サヨナラ


 皆で岬へと向かい、僕らはそこで思い思いの時を過ごした。
 この日の晩で、彼らと同じ宿で眠ることが出来る日は最後になってしまったけれど、一過性の付き合いではなく、今後も続けていけるであろう素晴らしい人達でした。
 まずは、近いうちに君の家に行くよ。
 再会が今から待ち遠しいです。

そして最果ての街へ


 本当に本当にこの距離は長かったです。
 この街に着く二日前に、それまで行動を共にしていた巡礼者達が違う街に一度寄り道してからここへ向かうと言っていて、お前はどうすると訊かれたけれど最終目的地へは一人で行くよと別ルートでゆっくりと歩き続けた。
 そしていよいよ最終日、残り約12kmをこの旅始まって以来最も遅いペースで歩き、それまで通ってきた道のりや、今後の自分の計画をゆっくりとかき混ぜながら、最果ての街に12時半に到着。そして岬までの約2kmを、早く辿り着きたいという願望と、最後の時をゆっくり楽しもうという気持ちを抑え、いつもの僕のペースで歩いた。
 この星は、この海は、この空はなんて綺麗なんだろう
 そして、人生はなんて素晴らしいんだろう
 本当に心からそう思えました。
 涙が出るような感動ではなく、それまで溜め込んでいた様々なものが僕の体からヒュッと抜け出て、さぁ新たな目的に向かってやったるかぁと、今までのものとは少し違う、ちょっとだけ余裕のある何かへと変化していくのを感じることが出来ました。
 僕はとても馬鹿な人間です。
 生活感は無いし、未だにホームレス達にはやけに挨拶されるし、可愛い女の子を見たらいつの間にかその子のお尻を追いかけてるし、計画性は全くと言っていいほど無いし、ちょっとした嬉しい出来事があっただけで、今夜はパーティだなとビールをグビグビ飲んだりしています。
 ただ、馬鹿で良かったです。
 馬鹿だからこそ、この旅を始めることが出来たわけだし、HPに書ききれない様々な泣き笑いを経験することが出来ました。
『カミーノ・デ・サンティアゴ』
 将来、必ずまたこの道を歩きます。
 全ての出会いと、全ての経験と、全ての泣き笑いを胸にこれからも馬鹿やらしてもらいます。
 おーし!! 生きるぞー!!

日数は限られている


 スペイン人のホアンはとにかく太っ腹で、何でも器用にこなすナイスガイ。
 ブラジル人のジュスィアーノは、一番年下でみんなの弟みたいな存在。
 ドイツ人のヴィリーは、結構ハゲてるけど優しい良いおっさん。
 スロバキアから来た女性4人は、僕にスラングばかりを教えてくれて、そのおかげで僕は屁をこいたら、スロバキア語で 『ワタシノ へ』 と言えるようになった。
 日本人の僕は、英語もドイツ語もスペイン語もテキトーなので屁とボディランゲージで笑いを取るしか道は無い。
 アルフレッドは急いで行かなくてはならないからと、僕らよりも先に行ってしまった。でも、僕に簡単なスペイン語を教えてくれたり、ウヒャヒャと笑わしてもらった。
 とても良い人達だなーと思います。

限りなく絶望に近いブルー


 その日の僕は、この旅をしてきた中で最もブルーになった日だった。
 なぜそうなったのかを書いても仕方がないので省略するけれど、とにかくブルーな一日だった。
 歩きながら何かについて考えても、全てがネガティブな方向へと向かって行くし、歩くにしても体がやけにだるくて、荷物はいつもよりも更に重く感じていた。
 この荷物をジャイアントスイングして、川にぶっ飛ばしてやろうかだとか
 全財産を思いっきりブン投げてやろうかだとか
 公衆電話の受話器をブチ抜いてやろうかだとか、とにかく 『凄く嫌な感じ』 だった。
 それを解決する一番手っ取り早い方法は 『もっとブルーになる』
 これが一番良い。
 一番良くないのが 「気分転換」 「リフレッシュ」 「ポジティブシンキング」
 これはただの逃避でしょ。
 ドンドンドンドン自分を落とし、もうダメだって思うまで考え続けて、ムシャムシャとパンを食べると後は意外とスッキリしていつもの普通の状態に戻れます。


 全てがガラスで作られた窓はとても見晴らしが良いけれど、その反面、自分の秘密を隠そうと思っても他の人からは自分の姿が丸見えです。
 一部がガラスで作られていて後は壁があるだけだと、見晴らしは悪いけれど、その反面、他の人に自分の姿を見られることはあまりなく、自分の秘密を隠し易いです。
 どっちが良いのかはその人の判断次第だけれど、僕は最近、窓ガラスや強固な壁を思い切って全部割ってしまいたい願望に駆られています。
 もしよかったら、僕と友達になりませんか?