Pさんのファインプレー

 僕一人が店にいるときというのは、ほとんどお客さんが来ない。

 自称だけでなく、他称も含めて、「人を呼ばない男No.1」 だという噂のナイスガイ、それが山田です。

 昼過ぎに注文をもらっていたすんごい可愛い女の子が来店して、はい、これどうぞと彼氏さんにプレゼントするやつを手渡して、可愛い子と話すだけで僕の気分はもりもりである。

 富山のアクセントで 「今日も可愛いぜー」 と言ったら 「どうもありがとう」 と言われ、なんだか良いなぁ うふふうふふ と相成った。

 その可愛いお客さんが帰ったあと、さてチャビくんよ、おぃちゃんは仕事すっぜと、いつもの集中力、否、山田力で以って仕事をしていたら腹が減っていることに気付いた。

 時間は16時。

 朝から何も食ってないのだ。 そりゃ腹が減る。

 チャリで近くのコンビニまで行くと、一気に空腹っぷりがもりもりと溢れ、こりゃもう普通のメシじゃ足りんぜよと、カレーとおにぎりを買った。

 そう、カレーの中におにぎりまでをも突っ込むという、弁当界のゲリラになろうとコンビニ内で決心したのだ。

 店を出る直前に、ぴりりと電話が鳴り、見るとそれはおはるからの電話だった。

 おはるは可愛いし、僕のおじさんぱわーぜんかいの話にも付いてきてくれるので個人的に結構、というか大好きである。

 今日は可愛い子二人と話したぞ。

 うっひひー 嬉しいぜー

 そこでチャリに跨り、店へと戻ろうとした。

 するとまた、普段は全然鳴らない僕の携帯が大活躍で、また電話が鳴った。

 あらあらあら。

 今度はどの子猫ちゃんからの電話かしらんと、わくわくしながら電話のディスプレイを見た。

 すると

 着信   ぴやのやさん 

 その画面を見た瞬間、僕の顔から笑顔は消え、まさに 0(ゼロ) の顔になった。

 無 である。

 大人としてここはやっぱり出るべきだろうと、三十路の僕は電話に出た。

 ハイモシモシ

 すると、電話の向こうのぴやのやさんはこう言うのである。

「どこ行っとるんよ?」

 完全にうちの店に来ていること確定である。

 悲しみの確定申告である。

「あ、ちょっとコンビニでメシ買ってたんすよ。 すぐ戻ります」

 さほど急ぎもせず、のらりくらりとチャリを乗り回し、あぁ、なんでここでぴやのやさんなんだろうと思いながらも店に戻った。

 店の前にぴやのやさんの車がある。

 でも、車には誰も乗ってない。

 あれ? どこ行ったんだろ?

 と思って、中庭に行ったら、勝手に窓を開けてチャビにちょっかいを出している40歳の男性を発見。

 うわぁーい と思った。

山 「おつかれさまでーす」

P 「おぉーす」

山 「どしたんすか?」

P 「ん? うん…」

 ぴやのやさんに近づくと、小さな段ボールがそこに置いてあって、「これくれるんですか?」 と訊いたら 「うん」 とPさんは言う。

「え? なんですかこれ?」

 そう言って段ボールを開けた瞬間。

 僕は一気にテンションが上がる。

 その中身はこれである↓

シルバーの工具

 シルバーの道具セット だった。

 このところシルバーもやり始めていて、最近ちょろちょろと道具を買い揃えているんだけど、これ本当に大袈裟じゃなく、欲しいと思っていたけど、ちょうど迷いに迷って買わずにいた道具ばかりで、とんでもなく感動してしまった僕は本当に何も考えずにこんな台詞を言ってしまった。


 ぴやのやさん!


 これ、ぴやのやさんの人生の中で、初めてのファインプレーっすよ

 昔ぴやのやさんが買って、なんやかんやで使わなくなった工具をせっかく持ってきてくれたのに、10歳年下の若造にそんな台詞を吐かれても、うっさいわ と苦笑いするだけに留まる男、ぴやのやさん。

 僕は昔から一言多いタイプの人間なのだ。

 それでも寛容なこの対応

 なんて良い人なんだろう。

(※↑のように褒めているのは、どうもぴやのやさんの友人とかがこのブログを読んでいるらしく、『あの山田ってやつにボロクソに言われてるね』 ってぴやのやさんが言われたみたいなので、やっぱりその、そのご友人各位のご機嫌を取っておこうというしょうもない下心からです。 どうもごめんなさい)

 その後、道具を一つずつ手にとって、へぇ~ ほぇ~ これ欲しかったんすよ本当に などと一人で声を張りまして、その後やっと冷静になってちゃんとお礼をしました。

 それからはいつもの、しょうもない男二人のしょうもない話である。

山 「今日は暑いっすね」

P 「うん、暑いね」

山 「…」

P 「…」

山 「お茶飲みます?」

P 「いや、まだコーヒーあるから」

山 「あ… はい…」

P 「…」

山 「今日はやっぱり暑いっすね」

P 「うん、暑いね」

山 「…」

P 「…」

山 「お茶飲みます?」

P 「あぁ、もらうわ」

山 「はい」

P 「…」

 その後、カメラの話になって、僕のGRをぴやのやさんは手に取り、ピピ というピントを合わせる音が店内に響く。

 だが

 なかなか カシャ というシャッター音が鳴らない。

 すると、ぴやのやさんは言う

P 「なんか最近さ、手が震えるんだよね
山 「それ、おじいちゃんじゃないですか

P 「だぁね」

山 「うん」

 その後、やっとカシャっとシャッター音が鳴り、先ほどカメラ中のデータを見たら、こんなのが入ってた。

Pさん写真

 こんな意味の無い写真撮るのなんかもう、おじいちゃんじゃないすか。

 それからどうやら自信を深めたぴやのやさんは、チャビのゲージに近づいて

「チャビー  チャビー」

 と呼ぶものの、チャビの表情は完全なるゼロ。

「チャビ、なんで横目で見るのよ。 正面向け」 とぴやのやさんが言うと

 チャビは眠りに就いた。

 チャビ、お前もファインプレー。

「あ、やべ電池無くなってきた。 まぁいっか」

 とぴやのやさんの小さい声が聞こえてきたけど、僕はなぜか聞かなかったことにした。

 fin…

※念の為、ぴやのやさんのサイトは↓
   ピアノリメイク工房 BBピアノ