枕詞として、「良い意味で」と付けた方が良いと思うので、一応念のために付けておくんだけど、うちの姉は良い意味でそこそこ残念なところがあって、先ほど数か月か1年振りくらいに電話があり、その会話がなかなかだったのでちょっと書いてみようと思うのです。
プルルルルル
僕「はいはい、どしたの?」
姉「あのさぁ、メイ(姪っ子)の幼稚園バッグのさ、あのー、プラスチックみたいでプラスチックじゃないような柔らかいところの付け根のところがパキッてなって割れたんだけど、どうやったらいいかね?」
僕「えーと、なんて?」
姉「だぁからぁ(←ちょっとキレ気味で)、メイの幼稚園バッグのさ、あのー、プラスチックみたいでプラスチックじゃないような柔らかいところの付け根のところがパキッてなって割れたんだけど、どうやったらいいかね?」
僕「いや…、同じことを繰り返してって言ったわけじゃなくて、もう謎の部分が多過ぎて全然わかんないからさ、ちょっとその、もうちょっと詳しく話しませんかね」
姉「うん、いいよ」
僕「まず、前提としてさ、俺はメイのバッグを見たことないのよ。メイがどんなの使ってるのか何も知らん」
姉「うん、そうだね」
僕「で、次に、そのプラスチックみたいでプラスチックじゃないような柔らかいやつって何? その素材が俺にはわからんし、それがどこに付いてるのかもわからんわけよ」
姉「なるほどなるほど」
僕「だからさ、まずはその、その壊れた部分の写真を送ってくれんかね。」
姉「えー。 そうじゃなきゃわかんない?」
僕「うん、わからん。何もわからん。出来ればわかってもわかってないフリしたい」
姉「こーれだもん」
僕「ただ、まぁよくわかんないけどさ、その辺のボンドでも塗っときゃ良いんじゃないの?」
姉「どんなボンド?」
僕「いや知らんけど、アロンアルファとかそういうやつで良いんじゃない」
姉「あー、あれはだめだめ」
僕「なんで?」
姉「私ね、アロンアルファ禁止令が出てるから」
僕「なんでよ?」
姉「あれってさ、すぐくっ付くしょや」
僕「うん、瞬間接着剤っていうくらいだからね」
姉「私ね」
僕「うん」
姉「あれを使うと100%指と指がくっ付くの。だからあれは全然だめ。使えない」
僕「…。 あのさ、この時点で一気に結論を言ってしまうとだね」
姉「なぁに?」
僕「わからんくてイライラするわ」
姉「え、なにがわかんないの?」
僕「この会話全てと、そのアロンアルファを使えない不器用さがよ」
姉「短気ー。 短気は損気ー」
僕「うるせーよ」
姉「じゃあわかった。写真送ればいいんね?」
僕「…うん…、そうして」
そして姉から携帯宛に写真が4枚。
そのうちの3枚は絶望的によくわからない写真で、どこが壊れてるのか全くわからん。
その時点で(あいつ…このやろう)と、僕のイライラは急上昇し、でもようやく最後の4枚目にどこが壊れてるのかわかる写真が送られてきた。
それで嫌々ながら電話をする。
ただ、正直この修理に関しては素人の人にはハードルが高くて、一応姉に「出来るか出来ないかはわかんないけど、とりあえず言うね」と前置きしてやり方を教える。
でも、やっぱりちょっとこれはさすがに難しいので、じゃあ別の方法を考えよう、ということになった。
すると姉は言うのである。
「幼稚園の先生から電話来てさ、もうこの部分は諦めてマジックテープを縫い付けるか、もしくは新品を買って下さいって言われた」と言う。
なーんか知らんけど、僕は昔から「代わりに新品を買ってください」とか「これ修理すると逆に高くつきますよ」って言われるのがなんだかすごく嫌で、その言葉を言われてようやくスイッチが入り、色々考える。
結果、マグネットならどこの手芸屋にもあるから、それを見えないところにくっ付けたら良いと思うよ。
そしたら見た目も汚くないし、とようやく終着点に到着。
姉も、「そっかー。マグネットなら良いね。じゃあそれ買って付けてみる」と一気に会話は明るい方へ。
ただ、「私に出来るかなぁ?」と言うので、「出来ると思うよ。それかタクローさん(夫)にやってもらったら?」と言ったんだけど、そこで僕は思い出す。
姉は上記の通り昔っから要点が掴めないような話し方をするタイプなんだけど、その旦那さんであるタクローさんは僕が今まで出会ってきた人たちの中でもトップクラスの優しい人なんだけど、それと同時に僕が今まで出会ってきた人たちの中で、僕の兄、母を超える極度の天然だということを思い出した(兄と母もなっかなか面倒)
細かいところを挙げるとキリがないけど、姉とタクローさんの新婚旅行の写真を見せてもらったら、本当に大げさじゃなくその6割くらいの写真のタクローさんは目をつぶっているか半目になっているという地獄のハネムーンフォトだったし、前にも書いたかもしれないけれど、タクローさんは姉に言われるまでずっと、自分が切った手や足の爪をプラスチックのゴミとしてゴミ袋に入れていて、「いや、これプラのゴミじゃないしょや」と姉が言うと、キョトンとした顔で「いや、半透明だからプラスチックのゴミで良いと思ってた。ずっと」と言ってしまうタイプの人なのだ。
そんなタクローさんに果たしてこのバッグの修理が出来るのか。
僕は人の可能性を信じたい。
信じたいけれど、怖い。何かとんでもないことをして、結局メイの鞄までプラスチックのゴミ袋に入れられてしまうのは心が痛む。
なのでここはやはり、ポンコツな 姉に任せるべきだろうと判断。
手芸屋でマグネットを買うところから教え、袋を開けてマグネットの爪の部分をバッグに一度当ててみて、そこに印をつけ、その部分を5㎜くらいカット。
そして爪をそこに入れて、外側にぐいっと曲げれば大丈夫だと思うよ、となるべく冷静を保ちながら説明。
ようやく姉は全てがクリアになったようで、そっかありがとーと言った。
僕は「あぁ、キョーコ」と言う。
「なに?」と姉は言う。
「今までのこのイライラしたやりとりさ、ブログに書くから」と言った。
「え? どこでイライラしたの?」と随分と不思議そうに訊いてきたので、あはは、じゃあまたねと言って電話を切り、僕はそのまま机に向かいパソコンのキーボードをいつもより強い力でタイプし続けた。