清水寺にいたひょうきんなおじさん。
面白いバッグを肩にかけて、身振り手振りを交えてこの女性にうははうははと話しかけていたけれど、女性の方はそこそこのリアクションでした。
なんだか自分を見ているような気分になった。
神戸での撮影のあと、僕は一人で京都へ。
清水寺まで歩いて行けるところにホテルがあるので、そこに荷物を置いてカメラを首から下げて清水寺へ。
そしたら連休の中日ってこともあるんだろうけどとにかくとんでもない数の人で、正直もうかなり辛くなって帰ろうかと思ったんだけど、あと50mくらい我慢すりゃ清水寺だと頑張って人の流れに紛れ、ようやく着いたらもうかなり気持ち悪くなってしまっていたので、速足で清水寺を抜けて帰り道へと入った。
帰り道は行きよりは多少空いていたけど、それでもまぁ一応は人の流れがあり、ちょっと一度気持ちを落ち着けてから帰ろうと一休み。
そして5分くらいしてまた歩いていて、どうしよっかな、もう今日はホテル帰って寝ちゃおうかなぁとかぼんやりと考えながら歩いていたら、いきなり ぐっ と右の肩の辺りを掴まれ、えぇぇぇなによ、誰よと思ってそっちを見たら、全然知らんおばさんが僕の肩を掴んでいた。
正直、びっくりしたし、その突然すぎる掴み方にイラッとして「なによ?」と言ったら、急に 「camera」 と言われてカメラを手渡され、 写真を撮れとジェスチャーしてくる。
言葉の感じからは韓国の人たちらしく、どうにもおばちゃん5人で清水寺を満喫しているっぽいので、あぁいかんいかん、女性にそんな顔しちゃいかんと、僕は笑顔を作り、「はい、撮るよー」と言って2枚撮り、アリガトと言われたので、サランヘヨーと言ったらドカーンとウケた。
それでもちょっとやっぱり、ドキドキして、急に掴まれると人ってやっぱりびっくりするなと、動悸を落ち着けるために深呼吸をして、よし、帰ろうと思って3分ほど歩くと、上の写真のひょうきんなおじさんがいて僕はホッとした。
良かった、世界にはこうして嫁にあまり構ってもらえない旦那がたくさんいるんだ。
あぁそうだ。だってうちの親父もそうじゃないか。オカンは笑ってるフリしてるけど、そういや全然違うこと考えてるみたいな顔してたなと思い、それで自分の境遇を理解して、さぁホテルで寝ようと歩いた。
するとその直後、急に誰かが ちょんちょん と僕の右肩を叩いた。
(えー… まさかね…) と思ってそっちを振り返った。
僕の目の前にはブラックマヨネーズの小杉みたいな、富裕層の中国人っぽいおっちゃんがサングラスをかけてニコリと笑っていて、「camera」 と言った。
まじか、と思った。
でも気分を変えようと思い、ニコリと笑ってカメラを構え、そしてここで (「はい、チーズ!!」の代わりに、「チャイ、ニーズ!!」って言ったらウケるかなぁ) と一瞬思ったけど、そもそも、はい、チーズを知らないとどうしようもないかと思い、「撮るよー」と言って2枚撮ってカメラを返した。
アリガト、と言われたので、 どういたしましてと言ってほぼ走ってホテルに帰り眠った。